猫との田舎暮らしをめざして

今年は都会を脱出!

獣医さんの診察

いつもと変わらないうに

 

うにのしこりを発見した次の日の朝、早速獣医さんに電話する。

予防接種はもちろんのこと、度々かかる結膜炎や食欲不振、尿検査などでいつもお世話になっている、かかりつけのお医者さんだ。

ただいつもと違うのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で診療を大幅に制限していて、予約がとりづらくなっていることだ。うにの状況を知らせると、折り返し連絡があり、診察は翌日の午前中に決まった。

天気がよく暑いぐらいの日が続いているので、うには窓辺に置いた爪とぎのポールの後ろに寝そべって、気持ちよさそうに昼寝をしていた。そして、日が傾いてくると、これまでは警戒して近寄ろうともしていなかった、タルトの形をしたクッションに自分から入った。ちょっと貫禄のあるうにの体型でははみ出しそうなのに、タルトの形そのままに丸くなっている。「アンモニャイト」とはうまく言ったものだなあ、と思いながら何枚か写真を撮った。明日はいよいよ診察だけれど、あまり深刻に考えたくはなかった。

 

獣医さんの診察

 

診察の日もとてもいい天気だった。

うには獣医さん行きを察しているので、キャリーケースに入りたがらずににゃあにゃあと抗議する。それでも割とあきらめは早く、仕方なさそうに入ってくれた。ずっしりと腕にくる重みを感じながら歩き始めると、ちょうどバスが来たので乗り込む。乗客はほとんどおらず、運転席周辺には幾重にも立ち入り禁止のテープが張り巡らされている。ものものしい警戒態勢、という感じだ。私も車内ではなるべくどこにも触らないようにして、次の停留所で降りた。診療所はバス停の真ん前なので、バスがタイミングよく来てくれた時は本当に助かる。

診療所では徹底したウイルス対策がとられていて、飼い主は待合室や診察室に入ることができない。キャリーケースを入り口で預け、うにだけが診察室に入った。私は建物には入らずに、駐車場の側に回る。表に面した窓から、診察室の中が見える。そして私は窓越しにテシエ先生と電話で会話しつつうにの様子を見守った。

「ああ、ここにありますね。何だろう。2月の健康診断の時にはなかったよね。」

「どちらにしても、これは早く取ったほうがいいでしょう。そして検査に出して内容物を調べてもらいましょう。」

「考えられるのは膿か、癌ですね。今の段階ではどちらかとは言えないけれど、大きくならないうちに取ってしまったほうがいいですね。それでは、手術はあさっての朝にしましょう。大丈夫ですか?」

あまりの展開の速さに、気持ちがついていかないが、私の中で取らないという選択肢はない。テシエ先生は私を心配させないためか、さらりとした口調で癌の可能性に触れたが、いずれにせよ早く取ったほうがいいというのなら、悪性である可能性もかなりあるのではないか。

「もちろん麻酔もするし、そんなに苦痛の大きい手術ではないから大丈夫。明日の夜からは食事をさせずに、あさっての朝、連れてきてください。」

それにしても、うにが手術を受けるなんて、想定外のできことだ。

汗ばむような陽気の中、帰りはバスに乗らずに歩いて帰った。

「何だろう、何だろう、どうして今まであのしこりに気が付かなかったんだろう。」

頭の中で繰り返し考えても、堂々巡りのままだ。

キャリーケースの中のうには、久しぶり外の空気に警戒しているのか、じっと周りを見つめている。時々私と目が合うと、にゃあ、と不安げに鳴いた。「よしよし、もうすぐおうちだからね、大丈夫だよ。」と声をかけながら家へと急ぐ。

 

家に帰って

 

帰宅して夫に診察の結果を報告すると、「そんなに大ごとなの?」と驚いた様子だった。それでも、「とにかく小さいうちにしこりを見つけられて、すぐに取ってもらえることになったのはよかった。それに今はコロナのせいでみんなが家にいて、ずっとそばについていてやれる。この状況はありがたいとポジティブに考えたほうがいいよ。」と励ましてくれた。確かにまだ悪性のものだと決まったわけではない。今はテシエ先生にお任せするしかないのだ。

当のうにはといえば、やっとキャリーケースから出してもらえてほっとしたみたいだ。同時にお腹もすいてきたようで、朝のエサの残りをバリバリと平らげ、台所の窓の下に集まってくるハトを眺めていた。

当然のことながら、うには自分の病気を知らない。あさって手術を受けることもわかっていない。安全な場所でおいしくご飯が食べられ、気持ちよく昼寝ができたら、うにの一日は幸せなんだと思う。我が家に来るまでは、動物愛護センターにいたうに。考えてみると、保護される前は、平穏な暮らしは保障されていなかったのかもしれない。うちに来たことがうににとってよかったのかどうかはともかく、快適に過ごせる環境をできるだけ整えて、少しでもうにに幸せな日々を過ごしてもらいたい。ついつい構いすぎては、うにに迷惑そうな顔をされてしまうけど、大目にみてやってください。うにが大好きだから、仕方がないんだよ。

手術が終わって悪いところを取ってしまったら、これまでみたいに思いっきりダラダラして、身体が溶けてしまいそうなほどの「だらうに」姿をずっと私たちに見せてほしい。

クッションに入って、「うにタルト」になるうに