猫との田舎暮らしをめざして

今年は都会を脱出!

うにの病気に気づいた日

うにの顎のしこり

 

そのしこりに最初に気が付いたのは、夫だった。

 

2020年4月13日はイースターの月曜日。新型コロナウイルスの感染拡大で、フランスは3月から最初のロックダウンに入っていた。そのために外出禁止が続き、みんなが家にいる毎日。だから祭日だという実感はなかったが、その日は夫のテレワークもなく、遅めの昼食を済ませたところだった。食後のんびりしているといつものようにうにがやってきて、夫の足元にまとわりついて撫でてくれとせがんだ。彼の撫で方は荒っぽくて、大きな手でがしがしとうにの身体をこするようにする。うににとっては、それが気持ちいいのだろうか? 結構気に入っていて、お腹を見せてゴロリと転がったり、身体をクネクネさせてもっともっとと催促するような素振りをみせるのだ。

そうしてうにの身体のあちこちを撫でていた夫が、「ここに何か塊がある」言ったとき、最初私はまともに取り合わなかった。

「どうせ骨か何かを触っているんでしょ。」と喉の右側の、顎の下あたりを軽く押してみると、小さな固い塊に触れた。逆側を押してみても同じようなものには触れない。柔らかい皮膚には何の抵抗も感じられなかった。

「えっ…。」一瞬絶句してもう一度触る。

触っただけではわからない。でも軽く押してみるとやはり、そこに固い何かがあった。

うに自身は多少押されても嫌がる様子を見せないので、痛みはないようだ。

だが、うにが反応しないのも逆に不気味だ。それがいつからあったのか思い出そうとするのだが、全く心当たりがない。喉の下を撫でてやることはよくあるのに、これまでそんな塊には全く気づかなかった。

 

うには病気なのだろうか

 

早速インターネットで考えられる原因を検索してみる。

「腫瘍」「癌」、そんな言葉ばかりが目に付く。猫の腫瘍は悪性のものが多いとも書いてあった。うにのしこりも癌なんだろうか?

病気と闘った猫や獣医さんの話がたくさん出てきて、夢中になって読んでいるうちに時間がたってしまう。気が付いたらもう夜になっていた。

まだ何かもわからないうちに、こわい話ばかり読むのはやめようと思うのだが、お風呂に入ってもう寝ようという頃になってもスマホが手放せない。8歳の愛猫に手遅れの癌が発見されて、一人で奮闘する若い男性の体験談を読んでいたら、いたたまれなくなり涙がでてきた。一人暮らしで頼る人もなく、仕事をつづけながら看病する彼は、ブログを通じて見知らぬ人たちに助けを求めていた。これまで生活を共にし、かわいがってきたネコの重病。精神的にも、また時間的にも金銭的にもさぞ大変だったことだろう。写真で見るそのネコはとてもかわいかった。ブログを目にしたたくさんの人たちからいろいろなフードやグッズが寄付され、懸命な治療と看病は数か月間続いていた。それでも最後は飼い主さんに看取られて、ネコは息を引き取った。

こんな話を読むのはつらすぎる。とくに今は…。

スマホから顔を上げたその時、居間の窓際のいつもの見張り台に陣取って外の暗闇を見つめていたうにが、ドタッと重そうな音を立てて飛び降りるなりこちらにやってきた。しばらくソファの下から私の顔を眺めてから、スッと私の横に飛び乗ってにゅーっと前足を伸ばしてくる。そして頭を私の膝にのせ、顎を押し付けてくる。上から見ると頭がぺったんこになったみたいなこのポーズは、なんともいえず愛嬌があってほんとうにかわいい。ぴんと立ったふたつの耳の間を撫でる。つるつるしていてしなやかで、とても気持ちがいい。うには目を閉じて、されるがままになっていた。さすがに今夜はもう寝よう、と撫でる手を止めると、薄目を開けて私の顔を見るうに。

うにが悪い病気だなんて、思いたくない!

膿か何かが溜まっているだけかもしれないし、感染で炎症をおこしているのかもしれない。

ただ、うにはもう若くないことも確かなのだ。

考えたくもないが病気にかかりやすくなる年代にさしかかっている。人間でいったら、私と同じ50代。身体のあちこちがだんだんくたびれてきているのは、私だって日々実感している。大げさだろうとなんだろうと、明日の朝いちばんに、獣医さんに相談してみよう。

そんなことを考えながら、床についたがなかなか寝付くことができなかった。

 

「あごのせ」が大好きだったうに