猫との田舎暮らしをめざして

今年は都会を脱出!

二度目の抗がん剤

二度目の抗がん剤治療のため入院

 

最初の抗がん剤治療から三週間後、二度目を行うことになり、病院で血液検査をしてから一泊の入院になった。

その日は血液検査の機械が不調だというので、うにの結果はなかなか知らされなかった。そのころ、病院のコロナ対策は多少緩和され、待合室も開いていたので、午前中いっぱいそこで待っていた。その日は仕事が休みだったので時間の心配はなかったけれど、早く家に帰って少し身体を休めたかったので、思いのほか時間を取られて残念だった。

待合室にいる間、ネコを連れた日本人女性を見かけたので、声をかけてしばらく話をした。彼女のネコは14歳で、うによりさらに年上なのだが、鼻に癌ができて、顔が腫れ上がってしまったのだという。それでも6回の放射線治療で顔は元通りになったそうだ。

あたりまえかもしれないが、人間と同じで、動物にもいろんな病気があるものだ。人間だって、同じ病院に来ている人たちがどんな病気なのか知りたいと思ったり、自分の病状と比べてしまったりすることがあるだろう。それで悲観的になったって仕方がないとはわかっているけど...。こんなにたくさんの治療を受けているうには重病なんだ、改めて実感してまた悲しくなってしまった。うにを含めて、ここに来ている動物たちが早く元気になってほしいと願わずにはいられなかった。

その日は帰宅して遅い昼食を摂ると、ソファの上で長い昼寝をした。早く治療が終わって、うにも元気になればいいのに。

 

食欲がなくなったうに

 

翌日は仕事だったので、夕方夫にうにを迎えに行ってもらった。いつものように、淡々とした様子のうに。それでもお気に入りのタルト型クッションにすっぽりと収まって、リラックスしているところを見ると、病院での一泊は、さぞかし居心地が悪かっただろうと不憫に思う。病院での様子を聞くと、やはり預けておいたエサは食べなかったとのこと。前回も、抗がん剤投与後2日程は食欲があまりなかったし、便も緩めだったので、今回もしばらくすれば大丈夫だろうと思い、様子を見ることにした。

ところが、数日たっても、うにの食欲は本格的には戻ってこなかった。それどころか、だんだん食べる量が減ってきていた。そこで、いつもはカリカリしか食べないうにだが、この際何でも試してみようと、あらゆるタイプの食事を買ってうにに与えてみた。パテ、スープ、ジュレ…。色んなメーカーのものを食べさせてみる。うまくいくと、小さめのパックを平らげることもあるが、匂いを嗅ぎ、ひと舐めしただけで、顔をそむけてしまうものもあった。また、スープやソースだけ舐めて、残りは丸々残してしまうこともあった。

日に日に固形物を口にしなくなるうに。

食べる意欲だけはあるのか、朝夕は台所のうにのお皿のところに来て催促するように鳴くのだが、いざ食べ物を目の前にすると、ちょっと食べただけで、そっぽを向いてしまう。病気になる前はとにかく食欲旺盛で、あっという間にお皿を空にしては、もっともっとと催促していたのに。夕方私が帰宅すると、ドアの前で待ち構えていて、ご飯をもらえるまでそばを離れなかったうに。お腹の周りに肉がつき、上から見るとソーセージみたいだと、娘にからかわれていたっけ。そんなことも、遥か昔のように感じられる。

食事が思うように摂れないと、力だって湧かないだろう。抗がん剤投与から一週間が経っても、元気にならないばかりか、一日中ぼんやり横になってばかりのうにを見て、私もかなり不安になってきた。

 

病院への不信感が生まれる

 

病院に電話をかけ、獣医さんの指示を仰ぐと、吐き気止めの薬を処方してくれるという。メールで送られてきた処方箋を持って、近所のかかりつけの獣医さんから薬を買った。本来、薬だけの販売はできないが、今回は特別に対応してくれるとのことだ。薬だけのために遠い病院に行くのは大変なので、とても有難かった。

それにしても、4錠で25ユーロほどもする高価な薬だった。早速うにに飲ませるが、効果は現れない。私は食欲不振を説明したのに、処方は吐き気止めというのもなんだか納得がいかない。病院には患畜がたくさんいて、獣医さんも多忙なのはわかっているけれど、うにのこと、ちゃんとわかって診てもらえているんだろうか。

再び病院に電話すると、食べないと体力が落ちてしまうので、次回の抗がん剤治療までのインターバルを3週間から4週間に延ばした方がいいと言われた。

一方、うにの食欲不振については具体的な指示がない。4週間待つのはいいが、それでもうにが食べなかったら? うにが元気にならなかったら、何をやっても意味がない。今のうには生気を失ってきていて、私は不安で焦っていた。

そして私の中には病院に対する不安と不信感が生じつつあり、これまで信頼してきた治療法についても、疑いを感じ始めてしまっていた。

 

かかりつけの獣医さんに相談しよう

 

そんな時、やはり一番頼りにしたくなるのは近所のかかりつけの獣医さんだった。以前からうには免疫が弱っていたのか、数か月に一度は結膜炎になり、その度にテシエ先生に診ていただいてきた。うにのトイレの回数が少ないと心配した時も、すぐに診察してくださった。その時は結局、ベランダのプランターにおしっこをしていたのに私が気づかなかっただけで、泌尿器系の異常はなかった。それでも、こんな私の取り越し苦労にも親身になって話を聞いてくださる先生が、うちから歩いて5分のところにいらっしゃるのが、どれほど心強かったかしれない。うにの顎の下のしこりに最初に気づいたとき、すぐに手術をしてくださったのも、テシエ先生だった。

ただ、最初の手術で疑わしいものを全て取り除くには限界があり、その後放射線治療ができる病院に移るのはやむを得なかったのだ。

やっぱりテシエ先生に相談してみよう、うにが食欲と元気を少しでも取り戻すためにできることがあれば、何でもしてみようと思った。

 

元気がなくなってしまったうに