猫との田舎暮らしをめざして

今年は都会を脱出!

手術の翌日

食欲が戻ってきたうに

 

手術当日の夜から、食欲は少しずつ出てきていたようだが、口の中の傷への影響を考えて食事は与えずにいた。

翌朝になると、お腹が空いて、鳴いてご飯を催促するほどになったので、パテ状のエサを少しずつあげてみることにした。普段は固形のカリカリを好み、他はあまり食べてくれないうに。それでも、さすがに食欲には勝てないのかかなりな勢いで食べ始めた。ただ、慣れないエリザベスカラーが邪魔して、思うようにお皿から食べられない。カラーの下の部分に盛大にパテをくっつけていたので、頭を少し下げてやりカラーがお皿に入らないようにすると、多少スムーズに食べられるようになった。

エリザベスカラー対策として、トイレにつけていた屋根も外した。用を足すところが丸見えでデリカシーのかけらもなく、申し訳ないなあ、と思ったのだが、うにはあまり抵抗を感じなかったようだ。ただ、ほぼ普段通りにトイレに行けるのはいいが、便に砂をかけようとして前かがみになり、カラーが排泄物で汚れてしまうのが難点だ。抗生物質や抗炎症剤を服用しているせいで便が緩くなり、余計にくっつきやすくなるのだ。それからはうにがトイレに行く気配を見せるなり、横に張り付いていて、用を足したら間髪入れずにうんちを取り除くようにした。いきなり過保護になった私を見て、うにも最初はちょっと変な顔をしたが、この新しい習慣にすぐ慣れてくれた。

手術翌日のうには前日に比べると多少元気が出てきたようだが、昼間は誰もいない私たちのベッドでずっと眠っていた。それでも午後になり空腹になると、台所に来てエサを催促した。一缶の半分ほどのパテを、レンジで人肌に温めてやると、おいしそうに食べる。食欲は旺盛なので、多少安心した。

食後は私たちと一緒に居間に移動するが、相変わらずエリザベスカラーのせいで身体感覚がつかめないようで、カラーをあちこちにぶつけながら不器用に歩く。いつもは障害物があってもしなやかに身をかわして歩いたり走ったりするのに、いやいやをするように首をふりながら、よちよちと後ずさりする姿が、かわいそうだが面白い。私たちがテレビの前のソファに座ると、その足元にうずくまってじっとしていた。ジャンプする自信がないらしく、お気に入りの毛布がある窓際のテーブルの上には登ろうとしない。

 

猫の病気を察知する難しさ

 

まだ傷口が痛むのだろうか? こんなとき、うにに体調を聞けないのがなんとももどかしい。元来ネコは野生動物の本能から、体調が悪い素振りを見せたがらないという。だから飼い主がよく観察して、少しの変調にも気づいてあげなくてはいけないのだが、それはとても難しいと思う。うには我が家にきた初めてのネコであり、一緒に生活してみて初めてわかることがたくさんあった。自分はネコ飼育の初心者だという自覚はあったので、心配事があればすぐに獣医さんに相談するようにしてきた。そして幸いなことに、これまでそのほとんどが重大な問題にはつながらなかった。少し食欲が落ちたときはエサに飽きただけだったし、尿が少ないと心配したときは、私が知らない間にベランダのプランターで用を足していただけだったからだ。

そんなふうに、今回も取り越し苦労だったね、と笑い話にできたらよかったのに…。

あの時偶然、夫が気づかなければ、私はしこりがもっと大きくなるまで知らずにいたに違いない。毎日うにを撫でていても、全く異変を感じなかった。

ただ…。

最近ほんのわずかなうにの変化、なんともいえない違和感を感じていたのも確かだった。

以前はガツガツとエサを食べ、早食い対策を考えなければならないほどだったうにが、微妙に食べ残すようになり、ここ数か月で体重が200グラム減ったのだ。太りすぎを警戒してカロリー控えめのエサに変えてしばらく経っていたから、その効果が出てきたのだと思っていたが、毎日数グラムの食べ残しは身体の異常の始まりだったのだろうか?

しかし2か月前に予防接種がてら健康診断を行った際、これといった異常は見られず血液検査の結果も良好だったため、気になりつつもやり過ごしてしまっていた。というより、漠然とした不安を抱きつつもそれが何かわからないまま日々を過ごしてきたのが、今にして「そういえばあの時…。」と思い当たったというのが正確なところだ。

一見些細なことに思われても普段とは何かが違う、そんな感覚はやっぱり大切なんだな、と実感した。でも今回はそんな気付きを掬い上げて病気の発見につなげることはできなかった。では、何をどうすればよかったんだろうか。答えは今でも見つからない。

 

私のそばを離れないうに

 

その日の夜も、うにと一緒に寝ることにした。私が布団に入ると、うにもついてきて布団に上がり、私の足のあたりで丸くなった。

うには保護ネコだったので、この年齢になるまでどんな生活をしてきたのかは誰にもわからない。そもそも推定10歳、というだけで正確な年齢すらわからないのだ。歯の一部分が欠けていたり、耳にいくつも引っかき傷や歯型のような跡が残っていたりするので、過酷な環境でたくましく生きていた時期もあるのだろうと思う。それだけに、どこかクールというか、人を寄せ付けないところがある。気が向かないと膝に乗ってこないどころかこちらに近寄りもしないし、自分が心地よい場所を見つけるとずっとそこで寝ていて、呼んでも反応しない。だから、これまで夜うにと一緒に寝ることはあまりなかった。ところが昨夜からは、音もたてずに私についてきてそばを離れようとしない。自分の病気や手術をどう理解しているかはわからないが、おそらく不安なのだろう。人間の年齢でいえば、私と同年代のうに。私にとっては子供と妹の中間のような存在であるだけに、うにがとてもかわいそうに思われる。私はうにの不安な気持ちに応えてあげられているのかどうか。何もしてあげられない自分に無力感を感じる。ただ、今はコロナウイルスのために外出禁止が続いており、ずっと一緒にいてあげることはできる。それだけが不幸中の幸いであるように思った。

 

エリザベスカラーは、うににとっておそらく初めての経験