猫との田舎暮らしをめざして

今年は都会を脱出!

全身の検査

またしこりが大きくなってくる

 

8月末の食欲不振から約2週間。

前回の診察の後で盛大に吐き、その後も丸一日元気がなくてとても心配したが、それからは少しずつ元気を取り戻し、以来うにの状態は比較的落ち着いている。ただ、また体調を崩すのではないかと心配で、一切の薬はやめていた。

食欲には相変わらずムラがあるものの、ある程度は食べられるようになった。エサも色々な種類を試してみたが、結局は食べ慣れたカリカリが一番好きなようだ。

進行状況が心配な癌は、米粒から豆粒ほどの大きさにまで成長し、いよいようにがカリカリを食べるのを邪魔し始めている。猫によってはカリカリをろくに噛まずに丸飲みしてしまう子もいるようだが、うにはポリポリと音をたててしっかりと噛む。腫瘍のある右側をかばうように食事をしているうにを見るたび、気の毒になった。

癌の再発はもはや明らかだったが、転移の有無を調べる全身の検査をするため、テシエ先生がバカンスから戻った9月の2週目に診察を受けた。

全身のエコーとレントゲンからは、特に異常は見つからず、血液検査の数値も正常の範囲内だった。癌さえなければ、うにはシニア年齢に達していても健康な猫なのだ。だからこそ癌になってしまったことが余計に悔しい。それにしても、つらい抗がん剤治療からわずか1か月ほどで再発を見つけてしまったときのショックはとても大きかった。かなりのスピードで大きくなっていく腫瘍を見るたび、私はこれまでの治療の効果に疑問を持つようになってしまっていた。

 

もう積極的な治療はしないと決断して

 

そして、色々と考えた結果、私が出した結論をテシエ先生に伝えた。つまり、これからはもう積極的な治療は受けさせないということだ。

4月に病気が見つかってからというもの、うにの生活は一変した。何度も麻酔をかけられ、身体にメスを入れられたり、放射線を当てられたりしたうに。知らない場所で、知らない人々に囲まれてとても不安だったに違いない。それでも病気が治ると信じて、これまでがんばってきた。けれども、取り除くたびすぐに大きくなってくる癌。これ以上、うにの身体にメスをいれるわけにはいかない。苦しい思いをさせたくない。

うにの平穏な暮らしを取り戻してあげたい。

おそらく、うににとっての幸せはとてもシンプルなものだと思う。食べたいだけ食べたら、大好きなバルコニーのプランターの土の上に寝そべって、昼寝をする。退屈したら、窓辺のテーブルの上で、外の様子を観察する。たまには、オジさんのところに行ってがしがしお腹を掻いてもらうのもいいし、あったかくてお肉のついたオバさんのお腹の上でまったりするのもいいな…。

うにには、そんな静かでのんびりした生活をさせてあげたい。

もちろん、積極的な治療を止めたら癌は加速度的に悪化して、うにの命を縮めてしまうだろう。でも私には、辛い治療でほんの少し死期を先延ばしにすることの意味が、もう解らなくなってしまっていたのだ。

テシエ先生は、私の意志を尊重して、「これからは快適な生活を優先させるため癌の治療は行わない」、とカルテに書き込んだ。そして、これからうにが食べられなくなったり具合が悪くなったりしたら、いつでも診せに来るようにと言ってくださった。

 

夏休み、どころではないのはわかっていたけれど…

 

ところでこの日は、もうひとつテシエ先生に相談したいことがあった。

それは私たち人間のバカンスの件だった。

ここ数年、夫と私は6月にバカンスを取っていたのだが、今年はうにの病気が見つかり、それどころではなかった。しかも、その時期は新型コロナウイルスによるロックダウンが解除されたばかりだったので、もしうにのことがなくても、どこかに出かけるのは無理だったと思う。一方、7月になって学校も休暇に入ると、フランス国内の各地でバカンスを過ごす人たちの数は徐々に増え、8月になるとヨーロッパ近隣諸国に行く人たちも出始めた。我が家では例年、私がバカンスの計画を立てる。でも今年は、うにの病状がどうなるかわからず、休暇のことを考えようという気にすらならない。だから9月に入っても何も決めておらず、夫もそんな事情をよく分かっていた。

しかし会社の規定では、10月の末までに3週間の休暇を消化しなければならない。そこで、9月の末から10月の初めまでの休みを申請したのだが、今回何をするかは依然として全く思いつかない。

もちろん、どこにも行かずにうにのそばで過ごしてもよかったのだが、「コロナ疲れ」という言葉を頻繁に聞くようになっていたし、2月から外出もままならない状況で生活してきて、かなりストレスが溜まっているという自覚もあった。また、私に気を遣って、出かける話を全くしない夫だって、本当は気分転換が必要なはずだった。それでも、うにをどこかに預けて長期間どこかに行こうという気にはとてもなれない。色々と考えた末、妥協案として、一週間以内の日程で、山歩きに出かけて新鮮な空気を吸って来ようかと思い始めた。

だがその間、誰にうにを預ければいいだろうか。病気になる前は、近所に住む姑にこれまで数回お願いしたことがあったのだが、数か月前から夫の姪の猫がいるので、うにと仲良くできるか不安である。病気のうにに、余計なストレスをかけたくない。それでは、娘のところはどうか。娘の猫、くろちゃんとはすでに何週間か一緒に過ごしているので大丈夫だろうが、今はもう一匹の猫、モーがいる。それでも、姑のアパートに比べれば、3階建ての一軒家だから、いざとなったらうにの避難や他の猫との隔離はできそうだ。ただし、うちからは車で2時間半ほどかかるので、移動がやや心配ではある。

テシエ先生に相談してみると、どちらの場所にも知らない猫がいるのであれば、やはり一軒家のほうがいいのではないかという意見だった。私も同じように考えていたので、娘の家に預ける方向で計画してみようと思った。

とにかくそれも、うにの健康状態が安定していることが大前提である。もしうにの具合が悪くなるようであれば、絶対どこにも行かない。無理に出かけても、うにのことが心配で、全く楽しめないのはわかりきっているからだった。

 

布団の上が大好き